027
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安曇野の平屋。A SINGLE-STOREY HOUSE IN AZUMINO · 2025

二〇二五年 一一月 竣工 Plate 027 · 広縁より南庭を望む / 東側からの眺め
Location
長野 · 安曇野NAGANO · AZUMINO
Type
専用住宅 · 平屋SINGLE-STOREY HOUSE
Structure
木造 在来TRADITIONAL TIMBER · 手刻み
Area
105.8 32.01 坪
Completed
2025.11起工 2024.08
Toryo
佐久間 吉衛SAKUMA · 4TH GEN.
施主の声 · CLIENT VOICE
土に近い暮らしがしたかったのです。朝、鳥の声で目が覚めて、素足で土間に降りる。棟梁は「それなら平屋で」と、迷わず。
内山ご夫妻 · 陶芸家 安曇野 · 穂高
棟梁のおぼえがき · TORYO'S NOTE
尺五寸の登り梁を、南北に通しました。柱を減らして庭と居間とをひとつに。木の芯を通すことで、百年、家が歪みません。
佐久間 吉衛 棟 二〇二五年 九月
— 其の一

敷地を、
読む。

READING THE SITE

安曇野の扇状地、西に常念岳を仰ぐ五百坪の敷地。地盤は砂礫層で固く、伏流水が豊かに通っています。施主のお二人は工房を併設することを望まれ、朝の光が一日中変わるアトリエを欲しておられました。

敷地の中央、古い柿の木を残したい、というのが最初のお話でした。柿を守るため、建物はコの字に開き、中庭を設けました。中庭に落ちる柿の影が、夏の冷気を呼びます。古人が縁側でそう過ごしたように。

Plate 027a · 敷地の中央に残した柿。樹齢およそ八十年
Plate 027b · 西 · 常念岳
Plate 027c · 南庭より見上げる — 十一月、黄昏時
— 其の二

木を選び、
刻む。

SELECTING & SHAPING THE TIMBER

柱は木曽の檜。四寸角を二八本、すべて同じ山から取りました。梁は信州の杉、五寸×八寸を基本に、南北に通る登り梁だけは尺角(三〇センチ角)を特注しています。

製材を終えた材は、作業場の天井に並べて一年半、自然乾燥。急激に水分を抜くと木は痩せて粘りを失います。ゆっくり、ゆっくり。木の呼吸に合わせて乾かします。

継手仕口は、柱の足元に「蟻落し」、梁と柱の交点には「渡り顎」。機械では刻めない、人の鑿(のみ)でしかできない角度を、八人の職人が二ヶ月をかけて刻みました。

— 其の三

建前の日、
雪が降った。

THE DAY OF RAISING

二〇二五年 三月 八日、朝。安曇野には季節外れの雪。施主も、ご親戚も、近所の方々も集まって、八人の大工と一本ずつ柱を立てました。

棟木を上げたのは午後 四時 一二分。屋根の上から餅を撒き、雪の中でご近所の子どもたちが拾う。七〇年、棟梁の家が続けてきた風景が、この日もありました。

平面図 · GROUND FLOOR PLAN S = 1:120
寸法と配置 · DIMENSION & LAYOUT

間取りの考え方。

東西 12,740、南北 7,280。八畳二間分の広縁を南に貫かせ、中庭を北へ開きました。柱間は全て一間=1,820 を基本に、モジュールから外れる場所は手刻みで逃げています。

最大開口
5,460 THREE-BAY SLIDING DOOR
軒の出
1,200 DEEP EAVES, SOUTH
天井高 · 居間
2,860 LIVING ROOM
基礎
布基礎 · 石場建て併用 ISHIBA-DATE, PARTIAL
使用材料 · MATERIAL LEDGER

この家に使った木。

部位 · PART 材 · SPECIES 寸法 · SIZE 仕上げ · FINISH 産地 · ORIGIN
土台栗 赤身120 × 120防腐なし · 柿渋東北・宮城県
木曽檜 四方柾120 × 120手鉋長野・王滝
大黒柱木曽檜 八寸角240 × 240手鉋・磨き長野・上松
登り梁信州杉 尺角300 × 300手斧 · 名栗長野・伊那谷
桁・母屋信州杉 化粧150 × 240手鉋長野・飯田
化粧垂木信州杉 赤身60 × 90手鉋 · 塗装なし長野・伊那谷
床 · 居間信州杉 柾目 30mm幅 150 乱尺無塗装 · 自然木蝋長野・飯田
床 · 水廻り木曽檜幅 90 × 厚 30鉋仕上げ長野・木曽
天井信州杉 板目幅 180 × 厚 12手鉋 · 無塗装長野・伊那谷
建具檜・杉(造作材)職人造作 · 和紙張長野・松本工房
屋根下地杉野地板 厚 15長野・伊那谷
土壁 · 中塗り大津磨き・漆喰信州左官組合
※ 国産材使用率 100% / 県産材使用率 78.4% / 産地証明書 あり
施工の記録 · BUILDING RECORD

一年四ヶ月の、仕事。

2024.08
木挽き · 選木

施主と共に木曽の山へ。八本の檜を選ぶ。

2024.10
製材 · 桟積み

作業場の天井へ。自然乾燥 一三ヶ月。

2025.01
地鎮祭

安曇野神社 宮司に祝詞を。

2025.02
基礎 · 墨付

棟梁の墨付け二週間、職人の刻み二ヶ月。

2025.03
建前 · 上棟

三月 八日、雪の中。八人で一日。

2025.11
引渡し

お餅とお酒。柿の実がまだ残っていた。